カラスの大逆襲
僕は『カラスの逆襲』を信じている。
今日も我が家の周辺ではカラスの鳴き声がうるさい。
電柱の上に大きな巣を作っているし、ご多分に漏れずゴミ集積所は彼らが食い散らかして散々な状態の有様だ。
さて、そもそもこの『カラス』という名前の語源は『カラ』の部分があのカーカーという鳴き声で、最後の『ス』はウグイスやホトトギスなどと同じく鳥を意味する言葉なのだという。
それはまあ許す。確かにカラスはカーと鳴く鳥だものな。
しかし、あの『烏』という漢字は何だ。
だいたい『鳥』というのはその姿を表した象形文字の象徴であるが、上部の『白』に見える部分の中の横棒は本来黒丸で、顔の中の目を意味しているものだ。
ところがカラスは真っ黒で、どこに目があるかわからなかったのでそれを省略してしまって『烏』という字になったのだというではないか。そんな失礼な。
おまけに漢和辞典で『烏』を引いてみると、その部首は12画の『鳥』にあるのではなく、一番下の『、、、、』を意味する4画の『火』の箇所にあるのだ。
そんな仕打ちを受けた鳥が他のどこにいる。
鳥の仲間からは外されて、そのうえ鳥が一番恐れる『火』の部類に入れられるなんて……。
さらに話は変わって、『髪はカラスの濡れ羽色』という言葉をご存じだろうか。
古来、日本女性のつややかな黒髪は、欧米人からも憧れられるほど魅力的なものだった。
ところがいまの若い女性(若くないひとも)ときたら、競ってその黒髪を茶髪や金髪に染め上げているではないか。
それではカラス自慢の『濡れ羽色』の立場はどうなるんだ?
このような侮蔑・屈辱を受けて、あの頭のいいカラスが黙っているとは思えない。
あんな間の抜けた字をカラスだと称した時から、そう『カラスの逆襲』は始まったのだと僕は確信している。
そしてカラスはそのアイデンティティを主張すべく、今日も高らかに上空で鳴いている。
かあ
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