悲しい象のお話
今日の朝日新聞の天声人語に、象の墓場の話が書かれていた。
象をめぐる神話や伝説は多いが、「象の墓場」もその一つだろう。死期を悟った象が群れを離れ、墓場に向かう。無数の骨や牙が散らばる墓場に身を横たえ、静かに死を迎える
これを読んで、僕はこんな話を思い出した。
2年前、ヨーロッパを集中豪雨が襲って大きな被害を出した時のこと、プラハ郊外の動物園では、浸水の危険から300頭の動物を避難させたものの、人気者のインドゾウやクマ、ライオンなどの動物は移動させることが難しく、逃げ出した場合に人を襲う危険があるということから安楽死させた。
もう顔の半分まで水に浸かった象の表情は見るに忍びないものだったという。
さらに辛いだろうは、長い間これら動物たちを世話してきた飼育係の人たちだ。
いったいどんな思いで可愛がってきた象の命を絶ったのだろう。
その心中たるや、想像するのも痛ましい。
このニュースを聞いた時、僕はさらに戦時中の日本の上野動物園の話を思い出した。
といっても僕だって生まれていない時代だから、聞いたのだが。
戦中のこと故、混乱が起きた時に危険ということで、軍の命令により強制的に動物たちは処分された。
多くは餌に毒を盛られて死んでいったが、象は頭がよくて毒をより分けてしまい、おまけに皮膚が厚いので毒薬の注射もできず、餓死させるしか方法はなかったという。
しかし人気モノだった三頭の象はあまりのひもじさに、人間の姿を見るたびに前足をあげ、膝を折って芸をして見せたという。
芸をすればまた餌がもらえると思っていたのだ。
倒れそうに弱っているゾウが、最後の力をふりしぼって芸をしようとする姿は、想像するだけで心が痛むではないか。
やがて戦争が終わり、その話を伝え聞いた親日家のインド・ネール首相がインディラ、ハナコ2頭の象を贈ってくれて、子供たちの人気者となっていった。
僕ら子供が見たのはこの象だ。
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