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「歩いて行けない尾盛駅に歩いて行ってきた」の記

  列車に乗れば隣駅からわずかに8分。
  しかしそこを2時間も掛けて尾根を越え自らの足で到達した男の、これは壮絶な イヤ お馬鹿な記録である。

 大井川鐵道・井川線 【尾盛駅

尾盛駅への訪問は困難である。
駅周辺に民家は無く、そのうえ駅に通じる道も一つも無い。
ここはすでに人間の住める場所とは言い難い。
周囲は鬱蒼とした森林に囲われ、人家は一切存在しないのだ。
このため唯一の到達手段は井川線の列車だけ。
2007年度の年間乗降客数は254人、2008年度は574人である。
(註:2005年の5倍!)

世の中、秘境駅というのがブームらしい。
鉄道自体にはあまり関心がないので秘境駅はどうでもいいのだが、それが「歩いては行けない駅」となれば別だ。
調べると、車道はおろか、駅まで達する歩道さえも一切無いという凄まじさ。
だから四駆はもちろん、バイクでも自転車でも行くことはできない。
駅にあるのはホームだけ。
そう、ここには『駅前』という概念すらない。

.
.
一切の道がないのだから、手段は鉄道に乗っていくだけだと?
ふーん、面白いじゃん。
それなら歩いて行ってやろう。尾根越えて。


 探索開始
Omori_01
尾盛駅へはお隣の接岨峡温泉駅を出て最初のトンネル右脇から入っていく。
わずか2.3キロの距離にトンネルが6つもあるということだけでも険しさが窺えるね。


Omori_02
次の列車まで2時間ほどあるので線路では保線作業が行われていた。
静かに進む。
遊歩道は終始井川線の上部を通っているので、石など落としたらタイヘンだからね。


 クマ除けスプレー
Omori_03
出発前の準備中にも、国交省の巡回車から「山ですか? クマには気をつけてください」と注意された。
そのため今回新たに装備したのがこのクマ除けスプレー。
命には代えられないが、一発噴射したら1万数千円が飛ぶ!! (>_<)


Omori_04
そしてまもなく、遊歩道は急速に崩壊し始めた。


 崩壊地現る
Omori_05
最初の大崩壊地はこうしてロープを渡して越したが、ここで2本のロープを使ったのは想定外。


Omori_07
さらに進むと……
なんだ? このワイヤーや明らかに人の手の加わった木材のザンガイは?


 ついに通行不能
Omori_06
ついに現れた完全崩壊部分。
そう、ザンガイは無残に崩落した橋のものだったのだ。
先人の記録によれば、止むを得ずここからロープで下の井川線に降り、残り100mほどは線路上を歩いて尾盛駅に到達したとある。
しかし、たとえわずかでも線路を歩くというのはご法度だろう。
それならどんな駅にだって「歩いていける」ことになっちまう。


Omori_08
という訳で、正当派の僕は少し戻って最後の尾根を直接登坂。
傾斜はこたえるが、尾根筋なら道間違いは起こらないしね。
右にも左にも下らなきゃいいんだから。

 尾盛駅・到達
Omori_09
駅上部と思われる尾根まで達し、GPSで慎重に位置を確認。
残り2本のロープを使い傾斜面を一気に降下した。
ロープは少々足りなかったが、バッチリ 目的の尾盛駅に到達!
もちろん、人っ子一人いない。

驚くけどプラットホームは左にみられる通常のものではなく、この木枠で囲まれた砂場がそれだ。
クマ用の公衆トイレだと思った?
20頭は並んで用を足せそうだね。


Omori_10
現役の駅である証明。
誰も降りない駅に一日6往復は贅沢なダイヤか。


 クマはやだけど列車の到着を待つ
Omori_11
駅舎などはなく保線用の詰所だけがあるが、近年クマの目撃情報が相次いだため、緊急避難用に施錠が外されたそうだ。
ここには5月と書いてあるけれど、つい先月にも構内でクマは目撃されたとか。
でも、貼り紙が小屋の中じゃ、意味なくね?


Omori_12
クマはノーサンキューだけど、あとはひたすら列車が来るのを待つ。
カメラは動画モードにしたので列車到着の写真はありません。
下の動画を見てね。


列車到着の動画はこちら
             
(なお、なぜ乗降客のない無人駅が存在するのかはここをみるとわかります)

【追加】
運転士さんとの会話が聞き取れない、との指摘があったので以下に掲載します。

「すみませーん。
あの、クマの出没があったんで、こちらの駅、いま利用停止してますけど。
大丈夫ですか?」
「あ すみません、気をつけます」

「どうします?
列車に乗られます?」
「いや、歩いて帰ります」

「一応、気をつけて」
「はい、わかりました。
ありがとうございます」

ちなみにこの列車はワンマン運行で、最後尾の機関車も先頭にいる運転士さんがリモートコントロールしてるそうな。
わざわざご心配、ありがとうございました。


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コメント

こんばんは。
記事が折られていたので、多分とクリック。
予想通り、続きがありましたね...三才ブックスか何かで読んだ事がありました。
最後を断念せずに、尾根伝いに行かれるとは管理人さんらしいですね。わくわくしながら最後まで読み切ってしまいました。

投稿: chiponeko | 2010.11.20 19:43

chiponeko さん
ありがとうございます。

最後の尾根は、事前に地形図を眺めながらこのくらいならなんとかなると思いました。
課題だったのは、やはりクマさん。
行くのが早いと彼らの食料集めに遭遇しそうだし、あまり遅くなって雪が降ったらこちらが行けなくなってしまう。
このところ急速に冷え込んできたので、もう冬眠に入ったことを願って行きました。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2010.11.21 06:11

道のない駅もおおっと驚きですが、ピーちゃんの身元引受人さんの生声、初披露(ですよね?)もなかなか貴重。純粋江戸っ子ではなさそうな微妙な地方のアクセントを感じたのは気のせいでしょうか。
ところでその駅から乗ったという切符は鉄道ファンにはかなりのプレミアものだったような気もしますねぇ。

投稿: | 2010.11.21 13:10

惑さん

あはは
以前、アフリカ・ポレポレで顔をさらしたことはありますが、確かに声は初めてですね。
自分でも、久しぶりに画面から聞いた。(゚_゚)

なお、ウチは僕も奥さんも大田区生まれでありますが……
「え~ どっこ~?」
まあ共に2代目なので、生粋の江戸っ子とは言い難いが。
切符は基本的には回収らしいですが、お願いすればもらえるようですよ。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2010.11.21 13:32

すごいですね…。記事を拝読してびっくりしました。貴重な映像はゆっくり見ることができる時のお楽しみにと思います。ああ、そんな冒険こそ何よりのたのしみですね。いいな。それにしてもすごい駅にびっくりです。

投稿: ぴょん | 2010.11.22 08:28

ぴょんさん
ありがとうございます。

この尾盛駅行きは以前から温めていた計画だったんですが、なんせ(今年は)クマさんとの折り合いもあって、実現が遅くなってしまいました。
終わっていま、ちょっと腑抜け状態であります。

また、次のモチベーション探さなくっちゃ。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2010.11.22 09:24

11月中旬頃に千頭~井川沿線に旅行に出かけておりましたので、時期的に同じ頃かもしれませんね。大井川鉄道では尾盛駅では熊の目撃情報があり危険であることから下車しないよう、再三呼び掛けていたり貼り紙がされていました。観光客を危険から守るための地元の方のそういった努力をわざわざぶち壊すような貴方様の蛮勇には恐れ入りました。どうか真似をされる方がいらっしゃいませんように祈るばかりです。

投稿: フミコ | 2010.12.02 02:50

フミコさま
初めまして。コメントありがとうございます。
またご心配や貴重なご意見をありがとうございました。

当方、今回最初から列車を利用するつもりがなかったため、ホームページでダイヤ等は見たものの、直接大井川鉄道に確認することはしませんでした。
また当日接岨峡温泉で出発準備中に忠告をもらった国交省のパトロールカーの職員からも、駅に行くこと自体は止められなかったため、尾盛駅での乗降ができなくなったことは知らずにおりました。
たいへん申し訳ありません。
今後はご迷惑をお掛けすることのないよう気をつけます。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2010.12.02 05:30

はじめまして!
山が好きでこちらにたどり着くことができました。
いろんな記事を楽しく読ませて頂いている途中です。
どの記事も読みごたえありますが、中でもこちらの内容、わくわくしましたー!楽しかった。
私の生まれ故郷に近い場所のお話しだったので、多分ピーちゃんの身元引き受け人さんが見たであろう風景を想像でき、余計たのしませて頂きました。
あの辺りも熊が出るんだ。 ご無事でなによりです。

大人になってもこういう切り口で冒険してらっしゃるピーちゃんの身元引き受け人さん、羨ましいです^^
さて、また今から他の記事拝読しに行ってきまーす!

投稿: 星 | 2013.01.06 13:18

星さん
コメントありがとうございます。

だいぶ前の記事ではありますが、最高にうれしいコメントを頂いてとてもウキウキしています。
わかっていただけて感激であります。
世の中に、冒険のタネは尽きまじ……とか。
最近は新しいネタを探すのに苦労していますが、これからも(自分自身が)ワクワクできるような探索をしたいと思っています。
また、読んでいただければ幸いです。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2013.01.06 13:43

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