もう一つの忘れ去られたロープウェイ(2)
ロープウェイを休止に追い込んだ二つの橋を渡り、ほぼ逆コの字の形をたどって対岸の駅に渡ってみる。
(C)Google Map
こちらには奥多摩三山の最高峰である人気の山、三頭山(みとうさん:1,528m)への登山口がある。
南岸を右(東)へとさらに進めば秋川へと抜ける、奥多摩周遊道路。
連続する急なカーブがウリで、かつてローリング族のメッカだった。
若い頃、これを見に行ったら自分がバイクで転倒し、血だらけで家まで帰ったことがある。(~_~;;
↑だって道路際にはこんな看板。
病院に収容されるまで2時間て (゚_゚)
(*なお地元のためにはヘリポートがあります。
そこは東京ですから……)
もう閉鎖された料金所際からすっかり苔むした階段を上ると、3階建て「三頭山駅」の建物が現れた。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
まずは階下に潜り込むと、こちらにも大きなプーリーやワイヤーが、今にも動き出しそうにスタンバイしている。
いったん外に出、あらためて本来の出入り口から中に入ると、今度は改札口がそのまま残されていた。
かつてはここに親子連れが喜々として行列したんだろう。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
ホームに出ると、川野駅にあったのと同じ型のすすけたゴンドラがあった。
こちらの搬器には三頭山から名付けられたと思われる「みとう号」という文字が書かれていた。
定員36人というゴンドラに試しに乗ってみる。
大きく揺れて、一瞬あせった。
これごと落ちたのでは話にならん。
前方の窓からさらに視線をやると、ワイヤーを支える高架柱が正面に見えた。
ほら、今にもロープウェイが対岸へ動き出しそうじゃないか。
建物外部に取り付けられた危なっかしい階段を上がり、屋上に出てみた。
はるか湖水の先、ケーブルの向こうに先ほどの川野駅が樹々の間に隠れている。
撮影位置が高いので対岸の駅はこちらと比べずいぶん低いように感じられるが、実際の高低差はほとんど同じ。
(正確には0.65m差)
これはロープウェイとしては珍しい、極めて小さな高度差ということになる。
あるいはこうしたことも観光ロープウェイとしての魅力を損なっていたのかも知れない。
季節柄、茶色く干上がった湖面もまた廃棄されたこのロープウェイの無念さを助長しているようだった。
撤去されないままに朽ちていくロープウェイ。
これもまた悲しい。
(終わり)
・伊豆熱海の廃ロープウェイはこちら。
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コメント
おはようございます
いつもと違って、気を紛らわせにやってまいりました。
「病院に収容されるまで2時間」という看板は、解かりやすくて親切ですね。
私なら「病院に収容されるまで2時間。地獄の閻魔様に接見できるまで3時間」と書きそうです。
ところで、たなぼたさんも若い頃は無茶をしてたんですね(*^^)v
投稿: poohpapa | 2011.05.16 06:58
poohpapa さん
おはようございます。
ちと誤解があるようなんで言い訳ですが……
僕自身がローリング族だった訳ではありませんよ。
まだバイクでは駆け出しだったし、単純に見に行っただけなんです。
注目のコーナーには、他にもたくさんギャラリーがいましたね。
ただ、高倉健さんの映画を観たあとのお客さんだって、帰りは自分が主人公の気分になっちゃうでしょ。
族仕様のバイクじゃないのに、帰り道その気になって寝かし過ぎたのが敗因なのであります。
P.S. 小猫ちゃん、見つかるといいですね。
投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2011.05.16 07:32
ごめんごめん、たなぼたさんがローリング族だったなんて思ってませんよ~。
車が本当に好きな人、ローリング族や暴走族にはなりませんもんね。
<<小猫ちゃん、見つかるといいですね。
有り難うございます。うちのピーちゃんもいなくなっちゃったんですよ。子猫たち、ひもじくて寂しくて鳴いてるんじゃないかと心配でなりません。
何事も無かったように母子そろって帰ってきてくれるといいのですが・・・。
投稿: poohpapa | 2011.05.16 09:01
poohpapa さん
揃って行方不明ということは、誰かに保護されたのかも?
いずれにせよ、親猫さんの心中を察すると心が痛みますね。
可哀想。
投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2011.05.16 12:33