小海線大曲と忘れ去られた駒頭石(後編)
前編で教わった石へのアクセスというのは、
「リゾナーレ小淵沢の駐車場から雑木林の中へと下って小川沿いに歩く」
という簡単なもの。
リゾナーレ小淵沢は、名前の通りここ小淵沢の地に建てられた施設で、イタリアの著名建築家マリオ・ベリーニがデザインしたという世界に誇るリゾートだ。
さっそく行ってみると、巨大施設ゆえ駐車場なんて何か所もあってまず閉口した。
とりあえず一番それらしい位置の駐車場にクルマを駐めたものの、すぐ前がフロント。
一流リゾートには場違いの自分の格好に気づき、早々に林の中へと逃げ込んだ。
そのせいか、初っ鼻から誤った方向に突入。
だって雑木林にといったって、周り中すべて林なんだし。
加えてなまじ事前に地図でそれらしい川の位置を確かめたために、本来より下流へ向かってしまったのだ。
(下流のほうが太いので地図に表記される)
だいたい林の中なんて、目標がないしね。
石とは関係ないけれど、この幾何学的な紋様は途中林の中で遭遇した送電鉄塔を真下から見上げたところ。
普通、鉄塔ってたいてい柵があって真下には入れないものだけれど、ここはフリー。
ふむ、ずいぶんと美しい造形美を描いているんだね。
感電しそうだけれど、山梨は関電ではなく東電の管轄である。
それにしても、途中出会った地元の人に尋ねてみても誰も石の存在を知らず、分からず仕舞い。
駒頭石よ。歴史ある筈なのに、そんなに君はマイナーなのか?
下流側にはもう林もなくなり溜池になってしまったので、止むなく上流側へと探索地を変更した。
あった!
さらに辺りの林の中をさまよった挙げ句、やっと発見したこれが目的の「駒頭石」だ。
なるほど、デカイ。
立てかけたストックのサイズで、その大きさのほどがわかってもらえるだろうか。
何より特徴的なのが、頂部に穿たれたこの注目すべき石柱だ。
確かに「駒頭石」と彫ってあるのが確認できた。
しかし驚いたのは、横にあった「安政5年」の年号。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
安政5年と言えば、将軍家茂(いえもち)の時代じゃん。
今から160年も前の江戸幕府の頃で、とても昭和の小海線建設とは関係のない古さということになる。
石柱には「小淵沢公有林検塚起点」などと書いてあり、どうやらこの巨石はそれ故に江戸時代から計測の基準点にされていたらしい。
ずいぶん昔からここで確固たるポジションを築いていたんだな、君は。
いくら巨石とはいえ、昭和の技術なら動かすのは不可能じゃなかったろう。
それなのに、平成の時代までここに居続けた君は偉い。
この石がほんとうに小海線のルートを左右したのかはわからないけれど、それは石の意思とは関係ない。
これからは、もっと大切にされるといいね>駒頭石クン。
(終わり)
駒頭石の周囲がよくわかる動画はこちら
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コメント
こんばんは。
あそこの川筋にあったんだ~...意外と拍子抜けするような処から入って行ったんですね。
管理人さんの事だから、深山幽谷の地に入り込んで行ったのかと想像していましたが、何と何とリゾナーレからだったのが驚きでした。この記事を読まなければ、何も知らずに居た自分がそこに居る事にもきずかされました。
投稿: chiponeko | 2011.06.13 21:12
chiponeko さん
さすが。
リゾナーレの所の川筋はご存じでしたか。
小淵沢から甲斐小泉の間ですから、そんな「深山幽谷の地」なんて無理ですよ。
いずれもさわやかな高原地帯ですもん。
ただ、こんな身近な所にあるのに、地元の人も全然「駒頭石」の存在を知らないというのが不思議でした。
(内緒ですが、あと10年もしたらこのリゾナーレが「遺構探検」の対象になりそうな匂いを感じてしまった)
投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2011.06.14 05:10