小海線大曲と忘れ去られた駒頭石(前編)
信濃境からさらに進み、今度は小淵沢へ。
旧中央線跡の探索から離れてこれは現行路線。
優雅にカーブを描いた線路は、これからJR最高地点を走る小海線だ。
小淵沢駅からいったん西に向けて出発した小海線だが、いきなり大きく進路を変え、180度のカーブで東へと向きを取る。
通称、「大曲」(おおまがり)と呼ばれるもので、撮り鉄さんにとっては名所らしい。
これは撮影ポイントから振り返ってみたところ。
さらにカーブが続いているのがわかるだろう。
ちなみに上を走っているのは高速の中央道。
小淵沢インターを通過し、長野方向に向けたすぐ左側に位置し、車内からもこの大曲が確認できる。
(でもドライバーはよそ見しちゃダメ)
ところでなぜ小海線はこんなに大きなカーブをする必要があったのだろう?
わざわざ逆の方向に向かうなんて、疑問に思わざるを得ない。
調べてみると、これには様々な説があることがわかった。
(1)富士見駅始発説
(2)急傾斜原因説
(3)巨石障害説
小海線が計画された当時、鉄道大臣だった小川平吉が隣の富士見町出身だったため、当初計画された始発駅が富士見駅だったというのが(1)の説。
しかし、後に中央本線自体が大幅に変更されたように、富士見町へ通すにはいくつものトンネルや橋梁が必要で土木的な困難があり断念。
急きょ反対の向きの小淵沢発にしたため180度カーブになってしまったというものだ。
C)Google Map
一方この地図でわかるように、小淵沢駅から次の甲斐小泉駅に繋ぐなら、わざわざ反対に行かずとも最初から赤丸のように結べばいい。
このほうが距離も短く、工事量も少なくて済んだ筈だから。
ところがこれだと標高881mの小淵沢駅から1044mの甲斐小泉駅まで標高差163mを7.1kmの距離で登ることになり勾配が規定よりきつすぎたのだという。
これが(2)の説。
ここは、今のルートでも横から見るとこんなに急傾斜だものね。
そして最後、僕が興味を持ったのが(3)の巨石障害説だ。
地図で確認すると(2)の路線はほぼ小さな川筋を辿っていて、地形的に割りと納得のいくルート。
(現実に、今はこのルートとほぼ沿うように小淵沢から甲斐小泉までを結ぶ県道が通っている)
その巨石は、ちょうど小海線の計画ルートに位置していたのだという。
鉄道敷設を邪魔するその石は移動させるか破壊するかしなければならなかった。
渓谷沿い(というほどではないが)に立てられたこの計画では、石があっても計画した路線のほうを変更するというのは確かに無理があり現実的でない。
ところが石への作業に取り掛かろうとすると、必ず大雨が降ったり、怪我人が続出したりして、やがて工夫が嫌がって工事が進まなくなってしまったのだという。
ふむ、羽田空港の工事で起きた穴守稲荷神社の鳥居のタタリのようじゃないか。
そんな石ならこれはぜひとも実際に見てみたい。
ところがいろいろ調べても、石の正確な場所がわからない。
やっと近くの西洋民宿「魔法の笛」という所のご主人が数年前に石を訪ねたことがあることがわかり、連絡してアドバイスをいただいた。
さあ、それじゃその巨石を探しに行こう。
(後編)へと続く。
列車が走るよくわかる動画はこちら
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コメント
おはようございます
最初は「たなぼたさんともあろう人が、90°と180°を間違えてやんの」と突っ込みを入れそうになりましたが、本当に180°だったんですね、失礼しました^_^;
地図より何より、動画で見ると解かりやすいですね。
これ、一度乗ってみたくなりました(^^ゞ
投稿: poohpapa | 2011.06.11 10:05
poohpapa さん
おはようございます。
動画でもその全部は映っていませんが、ほんとに180度なんですよ。
ちなみにカーブの内側にも撮影ポイントはあって、どちらにするか迷いました。
なんせ2時間に1本しか走らないので、考える時間は十分にあるのだ。
投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2011.06.11 10:43
こんにちは。
巨石の話...似たような話は勝沼駅の「桜」の話と同じですね。東京寄りの桜の古木を伐採しようとすると、何か起こるような事を耳にしています。で、ホームの位置をずらして建設したと聞いています。
小淵沢の大曲、軌道内で撮影をしようとする輩が後を絶ちませんね。事故が起こらないのが不思議ですよ。
投稿: chiponeko | 2011.06.12 10:34
chiponeko さん
勝沼駅にもそんな桜の樹があったんですか。
全国には、そうした話がいろいろあるんでしょうね。
>軌道内で撮影をしようとする輩が後を絶ちません
軌道内って、線路部分ということですか?
それは危ないですね。
僕の場合、5mほどは離れていたと思いますが、それでもスリルがありました。
脱線したら、轢かれちゃう。
投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2011.06.12 11:33