ブランド薬師のぶらん堂
これは長野市北部浅川という地域の地図。
みごとなループとS字を描いて登っていくのは県道506号線。
長野市から戸隠に至る山の中の県道だ。
(Mapion)
でも、ここで見て欲しいのは道路ではなくその左手にある「ブランド薬師」という神社。
ちゃんと鳥居のマークがあるから神社なんだろうけど、ブランド薬師って?
?(゚_。)?(。_゚)?
よく生臭坊主が「檀家の金を流用して外車やブランド品を買い集めた」なんて話は聞くけれど、最初から神社の名前に「ブランド薬師」と名付けるなんて、相当開き直ったヤツだ。
きっとグッチやヴィトン、シャネルなんかを大量に隠しているに違いない。
ここは一つ、懲らしめに行かなくては。
入口に着いた。
ふむ、確かに「ブランド薬師」と書いてある。
神社はこの上だ。
ただ、ここに面しているのはループの県道とは異なる別の細い道で人通りなどまったくない。
鳥居には蜘蛛の巣が掛かっているし、ずいぶんな所だな。
実はここからさらに険しい山道を嫌ほど登らされる。
周囲はヤブばかりで、とても公園なんて雰囲気じゃないし……
「こんな山奥で、何がブランドだよ……」
やがて上の地図のA地点に来た。
標高約600m。
ここは小さな展望台になっていて、長野市街が一望できる。
彼方に白く輝くのは長野五輪でスピードスケートの舞台となったMウェーブだね。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
そう、あれからもう13年も経った。
岡崎朋美選手、元気かな。
垂直距離で150mほども登り詰め、やっと神社のお堂が見えた。
ひえ~
この写真じゃわかりにくいけれど、メチャクチャ険しい所にあるじゃん。
半分は自然の岩肌をそのまま使って建てられている。
正式名を「八櫛神社」ということがわかった。
(地図のB地点)
大きな石の中に祠を彫り込み、石像のご神体が祀られている。
お堂から外を見渡せば、遙か下にS字になった県道が見下ろせる。
で、どこにブランド品は隠してあるの?
グッチは? ヴィトンは? シャネルは?
実はここ、まだ平安時代の大同2年(802年)に建てられたという古い由緒ある神社。
断崖のような急傾斜地に張り付くように建っているのだが、信州善光寺道からも見えるので古来から有名だったそうな。
菅原真澄の記した『来目路濃橋』には、「断崖のとても高い所に、不落(ふらん)堂がある。飛騨の工らが一夜の間に柱一本で建てたお堂で、薬師仏を安置している」とある。
歌川広重の浮世絵にも描かれているというし、井出道貞が書いた『信濃奇勝録』にも「ぶらん堂」として記されている。
↓
(国会図書館所蔵)
絵だから誇張はあるんだろうけれど、すごい立地だね。
その謂われは、落ちそうで落ちないお堂なので「不落堂」(ふらく堂)。
それがやがて「ふらん堂」→「ぶらん堂」となり、「ぶらんど薬師」として定着したものという。
一方、風が吹くとお堂がぶらぶら揺れたから、と解説する書物もある。
いずれにせよ、後世になってカタカナにされ「ブランド薬師」と表記されたため、ブランド品のブランドと間違える輩を生んだらしい(→僕だ)。
これは帰りがけに下から見上げたところ。
どうだい、すごいでしょ。
『信濃奇勝録』の絵ほどじゃないけれど、かなりヤバイのは事実だ。
今でこそコンクリートの柱で補強されているが、本体は昔のように木造のまま。
なんせ、床板の隙間から崖下が見えるんだから怖い。
お堂からループ橋が見えたのだから、ループ橋からもお堂は見える筈。
下ってからクルマを廻し、遠方から望むとこんな感じだった。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
このシチュエーションを見てからもう一度お堂に行くのは……
辞退しておく。
近くから撮影したよくわかる動画はこちら
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遠くから撮影したよくわからない動画はこちら
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