はかなく消えた善光寺白馬電鉄の遺構
長野市から白馬村へとつなぐ国道406号線。
善光寺さんを過ぎると、道は裾花川沿いに高台を走るようになる。
そして平成16年、建設費40億円という巨費を掛けて建設された、これが茂菅大橋。
うん?
橋の下に何か、古い橋脚のようなものが見えるぞ。
これは下に降りてみなくては……。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
これはなんだ?
なんてね。
もちろん調べた上で訪ねているんだけど。
これは昭和11年に一部開業した長野-北城間36kmを結ぶ善光寺白馬電鉄(通称善白)の橋脚だ。
しかし太平洋戦争のあおりを受け、昭和18年には政府から「戦時下の不要不急線」として営業休止を指示される。
そして理不尽にも全線の施設撤去を命令されてしまったのだ。
レールなど鉄類はすべて供出という浮き目に遭う。
それでも石なら残っている。
橋脚から500mほど歩くと、旧茂菅駅の名残が現れた。
中央の石段部分が、かつて茂菅駅のホームだった所だ。
しかし現在でも総人口270人という小さな茂菅の部落。
はたして何人の人がこのホームの上で電車を待ったんだろう。
茂菅を過ぎると地形は険しくなり、トンネルが連続する。
これが1号トンネル。
もちろん立ち入り禁止だから、良い子は入らない。
1号トンネルからの道は旧線路跡が今もそのまま道路として残っている。
こののどかな道がそれだ。
途中で現れたこの遺構。
一瞬、色めき立ったがこの穴じゃ電車は通れない。
実はこれ、明治31年この地に長野県初のダム発電所が作られた記念の史跡。
東京に遅れること20数年だったそうだ。
そしていま辿れる善白電鉄最後の遺構。
それがこの2号トンネル。
隙間からカメラを入れると彼方に出口の明かりが見える。
(マウスを置くと画像が切り替わります)
ただここにもレールはもちろん、犬釘一本すら鉄類など残されてはいない。
そしてこれより先は崩壊が激しい上に、後年路線部分に裾花ダムが建設されてしまったから進めない。
はかなく消えた、善白電鉄の遺構。
いくら戦争のためとはいえ、たった6年で終わりなんて。
妻科駅へ着けば裾花川が寄り添って対岸に白岩を露はしている。
左手に長野電燈の里島発電所を見て茂菅駅に着くと唐沢鉱泉があり第一のトンネルを潜る。
やがて電鉄の夢見る鉄道としてトンネルの天井は高い。
第二トンネルの手前にすぐ有名な裾花川松島の景勝を見、そして第三、第四トンネルを貫く二条のレールは煤煙禍のないカーの中から未来を示唆するかの如く光り輝いている。
【昭和11年11月23日付 信濃毎日新聞】
【鉄道遺構リスト】
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