春野町の旅(2)旧王子製紙レンガ倉庫
春野町の旅(1)日本一の天狗面から続く。
大天狗に別れを告げ、さらに国道362号線を進むと気田という町に旧いレンガ倉庫が保存されている。
ここは旧『王子製紙気田工場』があった所。
わが国最初の製紙会社である『王子製紙』の創業は1875年(明治8年)。
(創業者はあの渋沢栄一、カジノの会長の所は大王製紙ね)
その頃は洋紙が大量に輸入されていて、紙の国産化が国是とされていた。
しかし当時の製紙原料といえば麻や綿布等のぼろ布に過ぎず、そのため日本でも木材パルプによる本格製紙工場の操業が急務とされていたんだね。
そして1889年(明治22年)、王子製紙はこの地に木材パルプ製紙工場を建設した。
モミやツガを原料とした日本で最初の洋紙工場で、近くには『木材パルプ発祥之地』記念碑も立っている。
最盛期には300人もの従業員が働く大工場だったが、やがて原料になる木材(モミ・ツガ)の調達や工場が度重なる水害に見舞われたため、1923年(大正12年)ついに廃止に追い込まれたという。
看板にある通り、明治の香りがする旧いこのレンガの建物は工場の『製品倉庫』に使われていたもの。
しかしただのレンガ倉庫じゃない。
山間地の激しい気候の変化から製品を守るため、外壁は地元で焼かれた地煉瓦を使用し、内部に10cmほどの空気層を挟んだ上で木造の土壁を設けた二重壁となっているんだそうだ。
1977年(昭和52年)、静岡県の有形文化財建造物に指定されている。
現在は春野中学校隅の一角にあるが、そもそも工場だった跡地に後から中学校(当時:気多村立気多中)が建てられた訳で、倉庫のほうが中学に間借りしている訳ではない。
傍らに保存されているのはこれまた日本初という『砕木砥石』(グラインダーストーン)
今は横倒しになっているが、稼働していた時は起こされてモーターにより縦回転。
別の投入口から60cm程度にカットした木材片を入れて水と共に砕きパルプの原料を作ったんだそうだ。
ちなみに屋根四隅の鬼瓦に描かれたこの極太の四角い『引』に似たマーク。
これは漢字を縦横同じ巾の線で正方形に紋様化した『角字』という江戸文字だそうな。
この字の場合『水』を表しているとのこと。
つまり大事な製品を納めた倉庫が火災に遭うことがないよう、この瓦の字に製紙業ならではの願いを込めたんだね。
僕も祈ろ。
「カミさま、お願い」
春野町の旅(3)気田森林鉄道・仙郷橋に続く。
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コメント
新聞が広く読まれる様になって,紙の需要が増えた頃の
建物でしょうね。
中空構造により庫内の湿度と温度を一定に保っていた
のですか、日本の蔵とは違う考えですな。
水のマークはかやぶき屋根の上よく見かけます。
今度私も扱ってみましょう。
投稿: いはち | 2013.12.21 11:57
いはちさん
こんにちは。
>水のマークはかやぶき屋根の上よく見かけます。
あ、そうなんですか。
僕は今まで気が付きませんでした。
なんだ、教えてくれればいいのに…… 水くさい。
ちなみに僕はいつもおカミさんに祈ってます。
家内・安全を。
投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2013.12.21 12:09