南伊豆・湊海軍病院跡

これは何だろう？
すっかり伸びた雑草の中に立つ、街灯のようなもの。

上部は街灯のようだが、下部には配管や複雑なスイッチ類が並ぶ。
ここは下田の先、南伊豆町湊という所にある広大な病院敷地の一角だ。

正面奥２階建ての建物は、１９２３年(大正１２年)に建てられた『湊海軍病院』の第一病棟だったもの。
しかし戦後、国立湊病院、国立療養所湊病院、さらに共立湊病院など変遷を経て、さらに２０１２年(平成２４年)、下田メディカルセンターとなって下田市に移転されるという数奇な運命を辿った。

現在はすでに病棟としての役目から放たれ、倉庫扱い。
直接２階に上がれる階段はまるでバージンロードのように素敵だが、今は厚い蔦に覆われたまま。
新築の別棟だけが特別養護老人ホームとして細々として生き延びている。

南伊豆の温暖な気候、緑に囲まれた広大な敷地と、恵まれた立地なのにこうして放置されたまま。
再建の計画はない。

その理由は津波だ。
有名な弓ケ浜を背にしたこの辺り、国土地理院の地図によれば標高わずか３ｍほどしかない。
背後は山だし、東日本大震災を経験したいまこの地に大型病院の建て替えが認められることはないだろう。
下田市議会の決断で、まもなくこの建物は取り壊されることになる筈だ。
(現在は立ち入れません)

・旧稲取町隔離病舎はこちら。