秩父・滝川森林鉄道跡を歩く【前編】
奥秩父の山中にある東大演習林軌道は、その名が示すように東京大学農学部・秩父演習林内に存在した森林鉄道で、昭和の初中期にトロッコで木材を運んだもの。
荒川水系の滝川、入川二つの上流域にあって、今も多少その痕跡を辿ることができる。
今回はその滝川森林鉄道跡を歩いてみた。
ほぼ現在の国道140号線に沿った豆焼沢から入川の合流点までの約5キロ。
ただ崩落も進んでいてそのすべてを歩き通すのは難しい。
山梨側から雁坂トンネルを抜けた先、岩鋤橋のたもとから、釣り人が使うという滝川まで降りるルートを探ってみた。
ここから120mほど下った辺りに鉄道跡はある筈。
しかし急坂なうえ真夏のことゆえヤブが深く、さらに想定外だったのは降り口の橋が震災補強のためとかで大掛かりな工事中であったこと。
工事が始まった帰りに撮影したのがこれ。
(左下の谷に向け降りて行くつもりだった)
橋の直下にはすでに大きな重機も入って掘り返され、下る糸口すら定かでない。
これでは探索など覚束ない。
邪魔者扱いされて追い出されてしまうことだろう。
何より、良い子は公共事業の邪魔はしないものだ。
止むなく予定を変更し、もう少し下の位置から滝川へと下ってみた。
こちらの傾斜は緩やかだが、いきなり野生動物の骨が歓迎式典。
おそらくは鹿の大腿骨かなんかだろう。
もう鹿の骨くらいでは驚かないもんね。
計画を取り戻すべくいったんは上流へと歩を進めたのだが、日当たりが良いためか一面夏草によるこの無断寡占状態。
掻き分ければ草の中にはちゃんと渡れるように木製の橋が架けられているのだが、全然見えないよね。
とても真夏に歩けるような植生の状況ではなかった。
ということで再び断念、反転して下流方向へと向かう。
こちらにはすぐにきれいな森林鉄道跡が現れた。
鉄道跡といってもトロッコの単線なので道は狭い。
左の崖を80mほど登れば国道に、また右の崖を40mほど下れば滝川という位置関係になる。
釣り人はさらに降りていくことになる。エライね。
森林鉄道跡は一応人が歩けるように手入れが施され、いくつか渡る沢にはこうして木造の橋が架け直されている。
しかし気をつけないとならないのはこの腐食した穴。
ましてやこの辺り、秋から冬にかけては紅葉が見事なところで足元は落ち葉が幾層にも積み重なる。
そんな時知らずに歩を進めれば、そのまま足を踏み抜いてしまうかも。
大間川の森林鉄道跡が思い出される。
あそこはトンネルまで埋まっていたっけ。
足元に森林鉄道の痕跡が現れた。
わかりにくいが、中央の茶色いのは埋もれたレールの接続部だ。
これも落ち葉の季節には埋もれてしまい、気づかずに通り過ぎてしまうことだろう。
まだ何かある筈。
さらに歩を進めていく。
秩父・滝川森林鉄道跡を歩く【中編】に続く。
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