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小海・渋森林鉄道跡を歩く

高原美術館からさらに奥にクルマを進め、八ヶ岳に連なる天狗岳への登山口から歩き出した。

Shibu_01
ここは山の中、しらびそ小屋に続く登山道を歩いている。
以前ここには古いトロッコ軌道があって、登山道はその跡を踏襲していたのだが、度重なる台風来襲による損壊等で残念なことに現在はほとんど別ルートになってしまっている。
快適な登山道だが、レールはない。


Shibu_02
やがて現在の登山ルートから離れ、かつての旧道に分け入ってみる。
しばらく進むと道幅が広がった。
人が歩くだけの登山道なら上の写真のようにさほど幅は要らない。
ならば、この道路幅は森林鉄道の名残りなのか。
そして苔むしているが整然と横に並んだ角材の数々。
これはもしかして、昔の枕木?


Shibu_03
さらに歩を進めると、地表にトロッコレールの接続部が現れた。
間違いない、これこそ森林鉄道跡を証明するものだ。


Shibu_04
やがてさらにレールは至るところで顔を出し、かつての軌道を各所で偲ぶことができるようになった。

この渋森林鉄道は、その名の通り山から木を切り出すために戦後敷設されたもの。
直線距離で約1.5km、標高差約350mとか。
カーブも勾配も極めて急だが、ここは滝川森林鉄道のようにガソリンカーで牽引した訳ではない。
動力は1馬力。つまりお馬さん。
上りは馬が空の台車を引き揚げ、材木を積んだ下りはワイヤーロープでコントロールする木製ブレーキだけに頼る自由落下の「乗り下げ方式」だったというから驚かされる。
おそらく事故も絶えなかったんだろう。


Shibu_05
立地上、多少の損傷は覚悟。
懸命に路面修復をしたんだろうが、こうした大きな落石には叶わない。
加えて台風による大規模な土砂崩れは脅威だったろう。
やがて木材価格の低下もあり、昭和37年(1962年)頃ついに廃止されたという。
それからでもすでに50年以上経ったことになる。


Shibu_06
高台から下方を望むと、きれいなカーブを描いたレールが窺える。
しかし、路盤をえぐられた右の部分のレールが宙に浮いた状況になっているのがわかるだろうか。その下の路盤はない。


Shibu_07
軌道跡は現在ほとんど登山道から外れていて、探索には結構な藪こぎも強いられる。
山の主にとっては大メーワクなことだろう。
登山道に戻ったら、こんな恐竜が現れた。
「俺のテリトリーを荒らすな」って?

熊用の撃退スプレー持っているから怖くはないけれど、なに今日はここで勘弁してやる。
(ほんとは自分の脚力が限界だったんだけど)


現場で撮影したよくわかる動画はこちら
                

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コメント

今更ながら・・
上りは馬で、下りは木のブレーキで降りて来るなんて
すごく合理的と言えば合理的です。
天狗岳には桜平から登った事がありますが
しらびそ小屋に続く道って・・・私、そこを歩いた
のです。全くわからなかったです。
どの辺りから道が別れるのでしょうか?
よろしければ教えてください。

投稿: いはち | 2015.10.23 18:11

いはちさん、おはようございます。

桜平って、夏沢鉱泉の方ですよね。
軌道跡はそちらではなく、反対の稲子湯からしらびそ小屋(みどり池)を目指すルートになります。
現在はほとんど新道に付け替えられていますが、旧道の屏風橋のほうに行くと、すぐにレールが姿を現しますよ。
感動間違いなしです。ぜひどうぞ。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2015.10.24 07:22

ピーちゃんの身元引き受け人さん ありがとうございます。

しらびそ小屋とオーレン小屋を勘違いしていました。
題名に小海って書いてありましたね。
私は本沢温泉からしらびそ小屋経由で下山した時は
2月で零下15度。回りは雪しかなかったので
この道を見つけられなかったのでしょう。
車は橋の手前にある駐車場に停めればいいのですね。
おせわになります。

投稿: いはち | 2015.10.24 11:52

いはちさん、こんにちは。

雪が降ったら見つけられないでしょうね。
車は「唐沢橋」のゲート手前に10台くらい止められます。
ただ、軌道跡が目的なら、ひたすら屏風橋を目指してください。
そこから緑の細いロープがある旧道に入ればたどり着きます。
一度現れれば、あとはイヤというほど出現しますよ。
新しい「みどり池への道標」に従うと、新道に導かれてしまうので徒労になります。

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2015.10.24 12:34

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