林に消えたスキーリフト遺構【後編】
林に消えたスキーリフト遺構【前編】から続く。
記録ではリフトの長さは300m。
それならここから300m下ればいいのだが、廃止後に伸びた木々はもうすっかり成長してゲレンデを埋め尽くし歩き難いことこの上ない。
スキー場が閉鎖されてから放置されたままの46年の歳月はさすがに長い。
周辺道路を使い、いったんゲレンデ斜面の下側まで下り、GPSでアタリを付けてから再度、林の中に分け入った。
今度は下からのアタックだ。
しばらく樹々の間を彷徨うと、向こうになにやら構造物が見えた。
近寄ってみると、明らかに人工的な四角いコンクリート製の物体。
周囲に溝のようなものが掘られていて、全体に複雑な形状をしている。
もしもこれがリフト関連のものなら、上部構造と同じくもう一つ同じものがあって『対』になっている筈だ。
(もう向こうに答が見えているけどね)
そして、近くにはこれまた対になった鉄製支柱を切断した跡も。
これでリフトの上部と下部とが結びついた。
GPSからの計算ではリフトは記録にある300mより少し短かそうだが、位置と方向はほぼ合致。
ここがリフトの下部遺構だと比定して間違いないだろう。
途中いくつもある支柱跡を確認しながら逆に傾斜を登り返すと、上部からも見えた小屋風の建物にたどり着いた。
位置的にはリフトのラインのすぐ外側ということになる。
リフトに直接結びつくものではないが、スキー場には必要なものということか。
まるで倒壊家屋のように見えるが実際には屋根だけ。
屋根はこの設備を覆っていたものらしい。
内部を覗くと中には複雑に巡らせられたバルブ・ラインと配管たち。
このスキー場には人工降雪用の装備があったそうだから、これがその機械だったようだ。
なるほどそういえばリフトの両側にずっと下までこの配管が設置されていた。
それにしてもそんな昔に人工降雪設備なんて驚きだ。
こんな小さなスキー場ながら、時代の先端を走っていたことがわかる。
さすが富士急。
若者絶賛「富士急ハイランド」の最新鋭人気コースターも、こうした企業スピリットの表れなんだな。
そこからさらに登ると再びリフトの上部施設に戻ってきた。
これでリフト跡を完全踏破したことになる。
300mのリフト探索にトータル1500m以上も林の中を歩いてしまった。
また霧が濃くなってきたようだ。
デートならロマンチックだけれど、こうした探索に霧は大敵。
ルートを見失わないうちに撤退だ。
途中、傍らに古い木製の電柱が倒れているのを見掛けた。
横たわりながらも、ここに道があったことを懸命に主張しているようだ。
柱部分に較べ、古さを感じさせない陶製の絶縁体が今も輝いて見える。
ご苦労さまでした。
(お終い)
・伊豆熱海の廃ロープウェイはこちら。
・奥多摩湖の廃ロープウェイはこちら。
・千曲市の廃ロープウェイはこちら。
現場で撮影したよくわかる動画はこちら
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